本番で暗譜が飛んで真っ白・演奏停止にならないための対処法

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本番で暗譜が飛んで真っ白・演奏停止にならないための対処法

本番中に暗譜が飛んで真っ白になる・・・。

まあよく聞く言葉です。

加えて・・・かなり恐ろしい(汗)

でも・・・真っ白になる正体を知ってしまえば、決して怖いものではないです。

ただし、やはり厄介な問題ではありますが・・・。

  1. 暗譜が飛ぶ原因はやはり正確に音を覚えていない
  2. 原因はオートパイロット(自動演奏)である。
  3. 電子ピアノによる暗譜法をお勧めします。
  4. アコースティックピアノ(本物のピアノ)による暗譜法。
  5. 子供が本番でやってしまわないための対処法
  6. 舞台で生徒がやってしまった時の先生の対処法
  7. では本当に暗譜は必要なのか?
  8. 暗譜は小中学校の頃の宿題みたいなものなのか?(笑)
  9. なぜ演奏会で暗譜で弾いている人が多いのか?
  10. でも本当は暗譜は大変です(汗)

1.暗譜が飛ぶ原因はやはり正確に音を覚えていない

暗譜が飛ぶ原因は単純です。つまり音を覚えていない。文章で書いたら単純です。

大人の中には「歳になったから脳の記憶が劣った」と思っている人もいるでしょう。

ですが・・・残酷な告知になりますが、それは間違いです。

試しに、非常に簡単な曲ならば暗譜できるはずです。

逆に子供の場合でも、非常に難しい曲の場合は暗譜が飛ぶことはよくあることです。

歳とか記憶力が原因ではありません。

大事なことは原因を追求することです。

・・・しかし、練習中は何度も弾いている時にそんな失敗はしなかった。

はい、・・・そうです。練習中は「オートパイロット(自動演奏)」と言って、身体が勝手に反応して指を動かしてくれるのです。

2.原因はオートパイロット(自動演奏)である。

人間の体は実によく出来ていて、例えば、外出する時に急いでいると、家を出た後、「あら?鍵かけたかしら?」ということがよくある。

心配になって家に戻ってみると・・・一応鍵はかけてある。

おかしいわ・・・かけた記憶ないのに・・・。

そう・・・これがオートパイロットです。

ピアノを弾く動作はこの鍵をかけるオートパイロットの連続が出来るのです。

もちろん・・・これは危険な動作です。

指の動きで曲を覚える・・・これは間違いなくいつの日か100%失敗を犯します。

オートパイロットで本番を弾く行為は6発中1発実弾が入っているロシアンルーレットみたいなものと思って差し支えないです。

舞台であなたも死にたくないでしょう(笑+汗)

ではなぜ、練習中は失敗せずに本番の時だけ失敗するのか?

これは本番という、日常にはない、非常事態の精神的緊張によっていつもの平常な精神状況がなくなりオートパイロットのスイッチが切れるからです。

もし本番でもいつものように緊張せずに弾いたら・・・失敗はしません。

ですが・・・本番に緊張せずに弾くという行為は100%無理です。

これは巨匠でも緊張します。

緊張せずに弾く・・・という行為は羨ましいように見えますが、プロならばそれは否定します。

緊張なしの演奏は100%よくない演奏になるからです。

緊張するから、張り詰めた内容の濃い緻密な演奏をするから、名演奏になる。

緊張がないとダメなんです。

1800年代の頃には舞台で緊張しないためにプロのピアニストが出番前にお酒をある程度飲んで、ほろ酔い状態で弾いていたと逸話がありますが・・・当然のことながら、このパターンではほぼ全員酷い演奏だったに違いありません。

単純にアルコールが入ったために全く身の入らないひどい演奏になるからです(笑)

3.電子ピアノによる暗譜法をお勧めします。

では緊張する中でどうやって失敗せずに演奏するのか?

これはやはり一音一音全てを頭の中に記憶するしか方法はありません。

単純には・・・五線紙に全ての音が書けるか?・・・なのです。

ですがいちいち五線紙に音を書くのは大変です。

それが20分の曲だったら(汗)

そこでてっとり早い方法をご紹介します。

まずご自宅に電子ピアノはございますか?

理想は88鍵ですが、ポータブルの76鍵盤でもなんとかなります。

電子ピアノのスイッチを切って、音が出ない状態で、本番弾きたい曲を弾いてみて下さい。

弾いた時、あなたは安心して音が出ない状態で弾けましたか?

そして、弾いている間、音が出ないけれども、鍵盤を押すとあなたの頭の中で音が鳴りますか

次はあそこの鍵盤を弾くんだっけなと。

全く安心して、最後まで自信を持って弾けたのなら・・・間違いなく暗譜しています。

そして大概は・・・自信なく、「これで合っているだろうか?」と不安な状態だった人が100%でしょう。

試しにスイッチを切った電子ピアノで「チューリップ」でも「カエルの歌」でもいいですからメロディーのみ弾いてみて下さい。

音は鳴らなくとも安心して間違いなく自信を持って弾けるはずです。理由は簡単です。

あなたはその程度なら100%暗譜しているからです。

それと同じように曲を弾くときも全ての音が自信を持って弾けるように練習してほしいのです。

おそらくこれが100%暗譜をする諸法だと思います。

4.アコースティックピアノ(本物のピアノ)による暗譜法。

電子ピアノがお手元にない場合・・・と言っても中古でも良いので夜の練習のことも考えて是非買ってほしいのですが・・・

アコースティックピアノでも別の練習方法で確認は可能です。

まず、本物のピアノの場合は・・・ゆっくり弾いてみて下さい。

しかも異常なほどに遅いスピードです。

できれば、次の音を弾く前に・・・弾かずに、そこで立ち止まって、次の鍵盤はどこだっけ?・・・というスピードまで落として下さい。

その時・・・あなたは次の弾くべき次の鍵盤の音が浮かびましたか?

チューリップだったら・・・

咲いた、咲いた・・・チューリップ・・・のチューは・・・何の音かわかりますか?

ハ長調ならば「ソ」ですよね?

そのように自分の曲で弾く前に音が浮かびましたか?

これは全ての音がこのように頭に浮かんでくるか?を確認してほしいのです。

大概はじれったくなるので、すぐスピードを出し始めるのですが、そうならない為にも電子ピアノがあると良いのです。

このようにして、完全に暗譜しているか、確認してほしいのです。

私は電子ピアノを使う練習法はしませんが、常にゆっくり弾いて、確認はしています。

正直・・・これは本番で失敗するかもな・・・という箇所は薄々わかります。

人間なので実は全ての音を正確に覚えるのはかなり至難の技ではあるのです。

ですがこうやって、どこが危ないか・・・は誰でも探ることは可能です。

5.子供が本番でやってしまわないための対処法

さて、ここで子供の場合はどいうやって暗譜させるか?

方法は・・・上記のような方法が良いのですが正直、子供はそこまで面倒臭がって練習してくれません。

そもそも子供は本番で失敗するという恐怖を知りません。

恐怖を知っていれば真面目に取り組んでくれますが、そこまで真剣ではないでしょう。

この場合・・・方法はたった一つです。

つまり・・・禁断の果実(諸法)・・・「オートパイロット」を使うことです。

指導者としてそのタブーを使うのはどうかと思うかもしれませんが・・・それが危険ならば・・・

何が何でも電子ピアノで練習させて100%暗譜させることです。

・・・恐らくそれを取り組んでくれる生徒は・・・コンクールとか受験とかに関わる、しかも中学生以上でしかいないでしょう。

ただし・・・あまり難しくない曲ならば、「オートパイロット」はかなりの確率で成功すると思います。

ただし・・・ここで大事なことがあります。

オートパイロットを実現するためには・・・

一日1時間は最低練習することです。理想は2〜3時間。

同じ曲を何100回、何千回、何万回とオートパイロットで練習することです。

これしか方法がありません。しかも成功率は決して100%ではありません。

しかし、子供の場合はこれ以外に方法はありません。

6.舞台で生徒がやってしまった時の先生の対処法

さて・・・今度は講師側の話です。

本番中に生徒が暗譜が止まってしまった。

・・・よくあることです。

その場合、舞台裏で講師はどうしたら良いか?

この場合・・・講師は舞台に出て行ってはいけません。

厳しいようですが絶対に出て行ってはいけません。

出て行って何がしかのアドバイスを生徒にした場合・・・

大概は多分「最初から弾くように」と言うとは思いますが・・・そして最初から弾いて、大概はそれでなんとか済むことが多いのですが・・・

お客サイドから見れば、講師が出て行ってどうのこうの・・・とやる行為は完全に

「失敗演奏」

という印象を客席に与えてしまうのです。

それは決して良いことではありません。

できることならば・・・なんとか生徒自らが最初から、もしくはその止まった箇所あたりからもう一度引き直して、なんとか最後まで弾き通すことが望ましい。

そして・・・大概はこれで住むことがほとんどです。

この場合は来客に対して、あまり「失敗演奏」と言う印象は持たれないはずです。

どうにもこうにも戻れなくなって、かなり時間が経ってしまった・・・と言うのならば講師は出て行っても良いのですが・・・なるべく出て行かずに待つことです。

大概、これをしでかすと生徒の方も本番の恐怖を多少味わうので、以後、本番の練習にはかなり身が入ることが多くなるのです。

もっともそれでもそれは・・・「オートパイロット」を目指すことになるのですが・・・。

以上・・・暗譜が飛んでしまうことの対処法・・・理由を知って対処していただければと思います。


7.では本当に暗譜は必要なのか?

実はこの話、かなり現場では深刻な内容なのです。

というのも、現場(発表会会場)では暗譜していない人は、大人などは非常に多いのではないかと思うのです。

子供の発表会ではよく暗譜していることは多いと思うのですが・・・それはですねえ・・・(笑)

実は曲が簡単だから、暗譜できるんですよ!。

しかも子供の曲ってせいぜい2〜3分程度じゃないですか?そして音数も少ない。

それぐらいならギリギリ暗譜はできないことないんです。

しかし大人ともなると、時間が増えるだけでなく、音数も増えます。

結果・・・結局脳が追いつかなくなるんです。

そして・・・暗譜で弾けなくなる。

暗譜というのは簡単な曲ならば、例えば外に出かける時に、鍵を無意識にかけるじゃないですか?

もしくは九九の掛け算の暗唱。

あれが簡単な曲の暗譜だと思って構わないです。

つまり・・・覚えているようで無意識に弾いているようなものなんです。

短い曲ならね。

でも・・・流石に長い曲になると、鍵をかけるだけではなく、鍵の暗証番号までボタンで押さなければならないようなものです。

しかも暗証番号は恐ろしいことに20桁!!(汗)。

もしくはインドでは確か九九は2桁まで覚えると言う話を聞いたことがあります。

つまり36x59=2124って・・・汗。

なので、長い曲の暗譜は無意識というわけにいかず、完全に曲を理解して、隅々まで何の音があるかを認識しなければいけないのです。

単純には・・・完全に五線紙に書けるか否か(汗)

え?そんなことできません(汗)

いやでも・・・それができないと本当に暗譜したとは言えないんですよ。

なので、正直現場では暗譜しないで弾いている大人の生徒は大勢います。

いや生徒だけではなく、ピアノの先生も!(汗)。

それだけ暗譜は大変な作業なのです。

でもきっと現場のピアノの先生にはこういう意見もあるはず・・・

「暗譜なんてしなくても楽譜を見ながら弾けばいいのでは?失敗しなければいいんでしょ?」

まあ、間違ってはいませんが・・・。


8.暗譜は小中学校の頃の宿題みたいなものなのか?(笑)

宿題・・・あーなんて面倒くさいものなんでしょう(笑)

先生「宿題やってきましたか?村田君?」

村田「あ・・・いや・・・やってません汗」

先生「またですか・・・仕方ないわねえ・・・。」

学校で宿題とくると、こう言う思い出しかないのですが、暗譜も何となくこう言う雰囲気です(笑)

もちろん暗譜せずに楽譜を見ながら弾くことはまあ、構わないと思います。

しかしどこかに罪悪感というか背徳感というか、良心が咎めるんですよね(笑)。

じゃあ罪悪感がないんだったら暗譜なんかしなくていいんだ!

・・・まあそうです。良心が咎めないんだったら暗譜なんかしなくても構いません。

・・・ですが・・・

おそらくその代わりあなたの演奏は密度の低い、集中力の欠けた、感動的ではない、ただ単に音が並んでいる演奏になる可能性が大きくなります。

厳しい目で見ればですが。

9.なぜ演奏会で暗譜で弾いている人が多いのか?

まるで演奏会、発表会で暗譜をしていないで楽譜を見て弾くと「宿題をしなかった・汗」ととらわれがちですが・・・汗。

では楽譜を見ながら演奏するとどういう現象になるか?

まず、集中力の幾ばくかは楽譜を見ることに割かれてしまいます。

或いはかなりの集中力が楽譜を見ることに行ってしまうのです。

自分は今どこを弾いているのか?どこの音を弾かなければならないのか?

そういうことで、集中力が譜面を読むことに割かれてしまう。

そうすると自分の演奏を聞く余裕がなくなります。

結果・・・どのような演奏にするのか?という集中力がなくなってしまうのです。

日々の練習でせっかく音楽面まで隅々まで練り上げたのに、本番の時に、楽譜にばかり神経が行って、それを披露できない。それは困る。

なぜ演奏会で暗譜で弾いている人が多いのか?

それはこういう理由からなのです。

もちろん中には楽譜を見ながら弾いているプロのピアニストはいます。

しかし・・・私はお勧めしません。

事実、私は絶対暗譜します。

暗譜しないと自分の演奏に集中できず、いい加減で中途半端な演奏になるからです。

逆に言えば・・・

楽譜を見ながら演奏しているプロのピアニストは一般のピアニストを遥かに上回る集中力を備えた天才的なピアニストの可能性があると思います。

10.でも本当は暗譜は大変です(汗)

でもですねえ・・・本音を言うと・・・

暗譜ってかなりのレベルの内容ではあります。

俳優さんって全てのセリフを覚えているじゃないですか?

そういうレベルだと思いますよ。

誰もができることじゃない。

暗譜ができたと言うことは、かなりのレベルのピアニストになったと判断して構わないと思います。

逆に言うと・・・

暗譜ができないのであれば、まだまだ・・・と思って下さい。

大変厳しい助言ですが(汗)。

ただ、強制はしません。

ただ弾ければ良いと考えるのであれば、別に楽譜を見て弾くことは何も悪いことではないのですから。