大人のためのスキルアップ法

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大人のためのスキルアップ法

暗譜法、演奏時聴力、本番脱力、音楽性養成、すべての集中力スキルアップ法。

〜あなたは本番だから緊張してうまくいかないと思っていませんか?〜

舞台での本番というものは、おおよそ、日常生活では体験出来ない精神状態になるものです。この時、人はおおよそ普段とはかけ離れた状態になりやすいものです。

そのすべてが緊張してしまう事から来ているのですが、その緊張が引き起こす現象が、ピアノ弾きを悩ませる種となっています。

しかし、それらは実はなるべくしてなってしまったのであり、決して緊張しているから上手くいかなかったわけではないのです。

逆にいえば、本番こそ、あなたの本当の悪い部分が全部出てしまうのです。

これは別の言い方をすれば、本番の時の失敗の原因を研究すれば、あなたの演奏の欠点を克服出来る可能性が,かなり大きいなのです。

ぜひ、本番の時の失敗をじっくり研究して、次の本番の時に生かして下さい。

  1. あなたは本当に暗譜が出来ているのか?
  2. あなたは本当に自分の音を聴いているのか!
  3. あなたは本当に脱力が本番の時にできているのか3!
  4. あなたの演奏は指揮者のいない楽団のようなものではないか!
  5. 結局は場数経験も大事な対策です。
  6. 場数経験という対策の裏にある隠された鍵・・・「集中力」
  7. あなたは実は曲が仕上がっていないのでは?
  8. 練習とは、暗譜、脱力、音楽性すべてにおいての集中力の総動員である!
  9. 演奏中の感情過多はいけない!
  10. 楽しみだけで音楽を鑑賞するのはもったいない!?
  11. 積極的に録音機器を使うべし〜自分の先生は自分の耳と録音機器である〜
  12. 発表会でもらうDVDは古き良き思い出の記念品にあらず。
  13. あなたが上手くなれるかどうかは遅いスピードで練習できるかにかかっている。
  14. クラシック曲も立派な「即興演奏」なのです
  15. 本番で暗譜が飛んで真っ白にならないための対処法(別ページに飛びます)

1.あなたは本当に暗譜ができているのか!

あれだけ家では完璧に弾けたのに本番になると途中で真っ白になって音符譜が出てこなくなった。何度弾き直しても元に戻れない。そんな経験をした方は多いはず。

しかし、これをたまたま運悪く弾けなかったとか、記憶力が歳のせいで衰えたとか、本番で緊張したから真っ白になったというのは、実は間違いで、単純に、曲を覚えていない、それだけの事なのです。

・・・え?だって家では完璧に最後まで弾けたもん!

そう、家では誰でも間違いなく何も考えずに弾けてしまうのです。

これを私は「自動操縦」と呼んでいます。人間の頭脳とは恐ろしいもので日常の動作を無意識に行ってしまう能力を持っているのです。家を出た時に「あれ?鍵を掛けたかしら?エアコンスイッチ切ったかしら?」となる事ってありますよね。

だいたい、その場合、間違いなくエアコンを消して鍵は掛けているんです。でも、それを認識はしてはいない。

これと同じようにピアノを弾くという事も無意識に鍵盤を弾く動作をしているわけです。

しかし本番という日常ではあり得ない、緊張した特別な環境の中ではもはや、この自動操縦は効かなくなるのです。

そう、つまり手動操縦、言い換えれば無意識ではなく意識的な演奏になるのです。

その時始めて、実は暗譜していないために、途中で弾けなくなってしまうのです。

これでは曲を暗譜しているとは到底言えない。

では、どうやったら曲を完全に暗譜できるのか?

まず絶対にやってはiけない暗譜方法、それは決して指の動きで覚えてしまわない事。

もし、その事を確かめたければ、曲を非常にゆっくり弾く事です。

もし、ゆっくり弾いた時に途中でわからなくなってしまう場合,一見ゆっくり弾いたから調子が出なくなって弾けなくなったと思いがちですが、そうではなく、やはり暗譜をしていないだけなのです。

つまり、今まで指が勝手に「自動操縦」をしていただけなのです。

では、完全な暗譜とはどうしたら良いのか?

それにはまず、曲の完全な分析をしなければいけません。

まず、曲の構成は?バスとメロディーの構図は?曲のピークは?どのような和声を使っているか?内声部はどう構成されているか?

そのすべてを理解する事です。

本当に曲を暗譜出来た場合、本番だから、上がったから、真っ白になったという事はなくなるはずなのです。

逆にいえば、本番前にいかに曲を完璧に暗譜したかどうか?・・・これが暗譜の極意なのです。

こちらにも同じよぷうな内容があります。

本番で暗譜が飛んで真っ白にならないための対処法


2.あなたは本当に自分の音を聴いているのか!

これは、なかなか当事者には分かりにくい場合がありますが、実はかなりの人がこの現象に陥っています。

はたしてあなたが自分の音を聴いていないかどうか、その的確な判断方法は、

  1. あなた自身が練習の時には自分の演奏がうまくいっていると思っている
  2. 練習中に、頭の中で全然関係ない事を考えながら練習をしている。
  3. 練習中はうまく演奏出来ているのに本番になると、あちらこちらにうまくない部分が浮き出てくる。
  4. 先生に「音を聴いていない」と身に覚えのない事を言われた事がある。

もし、上記の様な事が思い当たる場合は、実は自分の音を聴いていない可能性・大なのです!

もっと体感しやすい方法は、例えば録音機、もしくはビデオカメラで、演奏を撮った時に、自分が思っていたのと違って、やけに乱暴に聞こえたり、スピードが速く感じた場合、それは間違いなく、自分の音を聴いていません。

実は、人間というものは、何かに没頭している時には、その一つにしか神経が行かない動物なのです。

これは当然の事で野生動物のように、回りに天敵がいないかを警戒しながら、えさを食べるという動作には慣れていないからかもしれません。

結果、他人の演奏には集中して聴く事が出来るのに、自分が演奏している時には、ピアノを弾く事に神経が行ってしまうので、もはや、自分の音を聴くという事に神経が行かないのです。

正直いうと、私も10年前は聴いていなかったと判断出来ますし、自分の生徒も実に9割は自分の音を聴いていない、もしくは聴いていない時があるのです。

ではどうすれば良いか?

自分の音を聞く一番良い方法は、とにかくゆっくり弾く事です。

そして弾いている時に、自分の音だけに集中する事です。

不思議な事に、実は自分の音を聴けているときというのは,絶対的に自分の演奏は下手聞こえます(?)

というのは、それだけ自分のまずい点が聞こえてくるからなのです。

どんな巨匠レベルでも,自分の演奏に満足はできないと言います。

自分の演奏に満足できないぐらい、良く演奏を聴ける様になれば,自ずと問題は解決するのです。


3.あなたは本当に脱力が本番の時にできているのか!

本番になると、どうも緊張して体に力が入ってうまくいかない・・・

良くある事です。しかし、それは本番だからどうしても力が入るわけでは決してなく、実は練習の時に既に力がある程度はいりながら練習していた可能性があるのです。

それが本番になると増幅されて、カチカチになってしまうのです。

実は本当に練習の時に力が入っていなければ、本番の時に力を入れないで弾く事は可能なのです。

なお、脱力に関しての文献を早わかり重量奏法スピード講座」に載せてありますのでこちらで研究してみて下さい。

4.あなたの演奏は指揮者のいない楽団のようなものではないか!

もしも、指揮者のいない楽団なんてあったら・・・どうなっちゃうんでしょうね?

当然、めちゃくちゃになるでしょう。

誰かが、テンポ、強弱、フレーズ、ピークの管理をしないといけない。

同じように、ピアノを弾く時には、自分自身がすべてのコントロールが出来ないと行けないのです。そして、その統制が緊張している本番であってもきちんととれる事!

本番だからこそ、上がってなんかいないで、自分がしっかりしないといけないのです。

演奏中は常に第3者的な自分が冷静に自分の演奏をチェックして、誘導する事。

テンポはこれで良いのか?音の大きさはホールに合った音量か?フレーズのピークヘ持って行くタイミングは大丈夫か?などです。

特にフレーズの歌わせ方、つまり、ルバートなのですが(ルバートは決してロマン派だけの処方ではありません)ルバートをどうかけるかは、この第3者的指揮者が全て統括して行わなければいけません。


5.結局は場数経験も大事な対策です。

様々な対策も大事なのですが、結局、場数経験もかなり大事な対策と思います。

特に神経質な人ほどこれは大事な事で、何十回でも舞台経験が必要です。(ここで言える事は、何回、という程度の本番では全く場馴れにはならないという事です)

舞台に立つと指、脚が震える、のどが乾く、指先が冷える・・・等、これらはやはり場数をこなして行くと徐々にではありますが、少なくなっていきます。

場馴れをする為に何度でも舞台に出て失敗を繰り返す・・・とても気がめいりそうになる事ですが、実際かなり神経質な私自身も、昔よりはかなり緊張しなくなりました。

また当音楽院でも、年に3回のプレッシャー大会(場慣れのための非公開発表会)に何回も出場している人は、やはり極端な緊張ということはかなり減っているようです。

6.場数経験という対策の裏にある隠された鍵・・・「集中力」

場数をこなせば緊張しなくなるというのは事実ですが,ではなぜ,場数が増えれば緊張しなくなるのか?

それは単純に舞台での演奏という事が場数を増やすことにより,幾分,通常の練習の精神状態に近くなり、それが結果的に演奏に集中できる様になるからなのです。

集中という言葉は難しい表現ですが,単純に演奏に没頭できるという事なのです。

実は集中しやすい、もしくは集中しにくい舞台というものがあります。

舞台が広くて,自分の視野から聴衆が見えない場合は集中しやすく、またサロン風のホールで自分の目の前に聴衆が視野に入ってくる場合は集中しにくいようです。

いかに普段の練習状態に近い状態を舞台に持ち込めるかが,勝負になるのですが、ではどんな状況でも舞台で集中するにはどうしたら良いか?

ここに実は大きなヒントが隠されています。


7.あなたは実は曲が仕上がっていないのでは?

〜2週間前に曲が弾けていない場合は本番で失敗する可能性が高い〜

生徒が本番で失敗するかうまくいくかは、 実はレッスンで生徒の演奏を聴いた場合、ほぼわかります。

実は失敗する場合はすでにレッスンの時に弾けていないのです。

もちろん生徒はそのことに気がついていない事が大半です。

ある部分がうまく弾けなかったことを「運が悪かった」で済ませてしまうのは,本当の弾けなかった原因を探ってはいないのです。

本当に曲が仕上がっている状態というのは、まず何度弾いても絶対的に安定して弾けるはずなのです。

この安定して安心して弾ける,という事はとても重要で、安心できない部分は必ず安定して弾ける様に仕上げないと,まず本番は失敗する事が多いのです。

つまり不安な要素,不安定な奏法状態で本番に弾く事は、僅かな緊張状態だけで、確実に本番の時に失敗させる要因を持っています。

逆に,完璧に安定して弾けるときは本番の時に多少精神的に不安であっても,実は成功する確率が高いのです。

そのためにも,本当に曲を仕上げた状態なのかどうかを見極める必要があるのです。

なお、確実に安定して弾けているかの判断は,他の項目でも重複しますが,非常に遅いスピードで練習してみて下さい。それで安定して弾けるのであれば,本番は安定して,速いスピードで弾けるはずです。

大変重要なので他の項目でも重複していますが,

〜緊張したから失敗したのではなく,既に舞台に上がる前から失敗は決まっていた〜

という事に気がつかなければいけません。

つまり、精神的な問題ではなく,テクニック,仕上げの完成度の問題なのです。

そして、安定して弾けている場合は,舞台でかなり集中して弾ける事に繋がります。

いかに安定させて演奏に集中するか。

これが秘訣の一つなのです。


8.練習とは、暗譜、脱力、音楽性すべてにおいての集中力の総動員である

練習において一番無駄な方法は、譜読み、音楽性、脱力、楽曲分析、暗譜、これらをばらばらにこなして行くのが実は一番効率が悪いのです。

本当に一番効率の良い練習方法は、このすべての要素をいっぺんに習得してしまう事なのです。

一見難しいように見えますが、譜読みの時からこのすべてを行う事は決して、難しい事でないばかりか、とても大事な事なのです。

たとえば、音楽性と脱力(テクニック)は切っても切れない関係ですし、譜読みと楽曲分析、暗譜もやはり密接な関係に成り立っています。

もちろん、この中で一番時間を要するのは、暗譜でしょう。

しかし、その暗譜も曲の楽曲分析ができれば、おのずと覚える時間も短くなるはずなのです。

9.演奏中の感情過多はいけない!

時々、演奏者が、表情たっぷりに体や顔でアピールしながら演奏している人がいます。

それで演奏がうまく行く人はそれで良いと思います。

もしくはそれがあくまでもパフォーマンスであり,本人は余裕のよっちゃん(?)でやっているならかまわないと思います。

しかし、私はそういう表情を出して弾く、つまりどっぷりと感情に浸って弾く事は大変危険な事だと思っているので行いません。

何故なら、感情に自分が浸る事により、今出てきている自分の音に集中出来なくなったり、演奏内容の管理に行き届きが出来なくなるからです。

演奏している間は、常に自分の演奏を厳しくチェックして、すべてのバランス、進行具合を第3者的に判断しながら進めなければ行けないわけで、そういう時、演奏者は異常なまでにクールでなければ勤まらないと思うのです。


10.楽しみだけで音楽を鑑賞するのはもったいない!?

例えば私は仕事の時間帯上,あまりリサイタルには出かけませんが,たまに行く場合,実はあまり演奏を楽しんで音楽に浸って聞いていない事が多い。

しかも座る時、もしくは席を予約するときは,あえて最前列の右側(つまり演奏者の手が完全に見えない所)に座る事が多い。

では私は演奏中に何を観察しているのか?

実は私はそのほとんどをペダルを見ている事が多いのです。

ピアノ演奏の最終兵器、ペダルは本当にうまい人はかなりのペダリングテクニックを持っています。

右のダンパーペダルに,左のソフトペダル,この使い分けはかなり奥が深い。

卓越した演奏者はいったいどのようなペダリングをしているのか?・・・演奏会はただ単に楽しむだけでなく、格好の研究材料が豊富なのです。

また自分が気に入っている魅力的な演奏のCDは、どちらかというと聞き流すよりも,いったいどのような方法でこのような演奏が生まれてくるのか?・・・それを分析しながら聞いています。

当然、フレージング、ペダリング,間の取り方、和声の響かせ方、ルバート、そのすべてを参考に取り入れるわけです。

なお、どちらかというとCDよりも映像が入ったDVDの方が,さらにペダリングもダンパーの動きで,そしてさらに奏者の奏法も観察できるわけです。

それにより得た情報は,いち早く自分の演奏や、解釈に役立てるわけです。

演奏会は,もちろん最終的には楽しむためでもありますが,自分が上達したい場合などは,このような利用方法もあるわけです。


11積極的に録音機器を使うべし〜自分の先生は自分の耳と録音機器である〜

自分の演奏というものは、演奏しながら冷静に聞くことはとても難しいものがあります。

自分でうまく弾いていると思いきや、実はまずいことをしていたことは意外に多いのです。

しかし、なかなかそれは気がつきにくいものです。

もちろん、弾きながら自分の音が聴けなくてはいけないのですが、自分の演奏を冷静に聴くためにも、ここはひとつ、録音機器を積極的に使うことをお勧めします。

現在、録音機器は非常に安値でかつ高性能な品物が手に入る時代です。

これを使わない手はありません。

録音機器を使えば、第3者的に自分の演奏を冷静に聴くことができるわけです。

自分の音質の問題はもちろん、全体の曲の構成などは、なかなか弾いている最中には気がつかないことも多いものです。

あえて自分が批評家となって自分の演奏を判断するわけです。

もちろん、録音機器に頼りすぎて、毎回毎回、録音ばかりして、肝心の演奏中に自分の音をリアルタイムで聴かないというパターンに陥ってはもちろんいけないのは当然ですが。

最終的には自分の録音した演奏を聴いて、自分で満足できるように仕上げることはとても重要です。

おそらく相当にショックを受けることは間違い無いのですが(笑)上達するにはこれが一番の方法なのです。

あなたの間違いを指摘してくれる先生はもちろん、あなたが師事している先生•••ではあるのですが、最も身近で最も信頼できる正直な先生は、実は自分の耳と録音機器なのです。

なお、録音機器は、現在私はあるメーカーのみしかお勧めしません。

TASCAM

完全に自分の演奏をリアルに再現するためにも、このメーカーのPCMレコーダを強く勧めます。

なお、例えばビデオカメラなども最近はハイクオリティのPCM録音音質ではありますが、私はお勧めしません。

このような録音機器はマイクが貧弱で、かつ録音レベルが音量によって自動的に変化するようにできているので、正確な演奏として再現されません。

ホールなどでは遠近の関係上、うまく録音される時もありますが、比較的狭い空間の場合は失敗する確率が高くなります。


12.発表会でもらうDVDは古き良き思い出の記念品にあらず。

発表会ではよく写真とDVDをもらうと思いますが、まあ子供の生徒ならともかく、大人の場合は•••。

DVDは古き良き思い出の記念品ではありません!

特に大人の場合はおそらく演奏は失敗している確率が高いでしょう。

ですから大概は全く見ずにどこかにお蔵入りしている可能性は高いと思います。

しかし•••。

是非、DVDはお蔵入りせずに、しっかりと見て反省して欲しいのです。

自分の演奏の何がまずかったのか。

本番というものは緊張のあまり、演奏がうまくいかないいことが多い。

しかし、緊張したから失敗したというのは、間違いです。

その演奏そのものが残念ながら今のあなたのまぎれもないレベルなのです。

本番の失敗は偶然でもなければ、緊張のためでもありません。

然るべく、当然のごとく、誘発した本来のまずい点が必然的に露出しただけなのです。

本番とは怖いもので、普段の練習の時には気がつかなかったまずい点が必ず全部、100%出てしまうのです。

失敗のパターンはいろいろあるでしょう。

暗譜が飛んだ

••••••飛んだのではなく、初めから暗譜していないだけ。

スピードがあせって速くなった

••••••普段から速く弾いていたことに気がつかなかっただけ。

部分的に転んでしまった

••••••普段から力が入って転んでいたはず。

音ミスが多かった

••••••普段からミスしやすかったはず。

全く音楽的に弾けなかった

••••••普段から音を聴かずにそのことに気がついてなかっただけ。

このような失敗に普段から気がつけば本番に失敗しなかったはずなのです。

なので、本番でなければ症状がわからないこともあるでしょう。

ですから•••是非、本番という全ての負の実力が100%出た貴重な記録をもう一度、検証し直して欲しいのです。

本番の時だけの記憶などというのは曖昧ですし、意外と自分ではわからない欠点も見つかる可能性もあります。

それによりあなたの失敗をすべて潰すチャンスが生まれるのです。

また、緊張すると出やすい現象も各自あるはずです。

私の場合はスピードが速くなりがちになるので、なるべく本番はスピードをわざと遅く弾くよう心がけています。

それぞれ各自自分の本番の時に出やすい特徴はよく認識することは重要です。

•••本番までは十分、検証を行いつつ、挑んだけれども、ダメだった•••

そんな時、なぜ失敗したかは単純に緊張のせいにせずに、DVDというデータを元にもう一度検証し直す必要があります。

もし、あなたが本番の失敗をいつまでも緊張のせい•••にしてれば、いつまでも進歩はありえません。

非常にしんどい反省会ではありますが(笑)もしあなたが本気でピアノを上達したければ、実行してください。


13.あなたが上手くなれるかどうかは遅いスピードで練習できるかにかかっている。

誰でもテクニカルな速い曲は、CDのように速く弾きたいものです。

なぜなら、その方がはるかにかっこいいから。

逆に遅いスピードで弾くことは非常に「みっともない」という感覚がでます。

しかも日常耳にする演奏はCDでもyoutubeでも非常に速い。

だから自分が速く弾けないのは、練習が足りないからだ。速いスピードで弾けなければ意味がない。

・・・そういう固定観念に引きずられて、速いスピードで誰もが弾きたがります。

しかしその先は間違いなく、仕上がらないどころか「破局」でしかありません。

遅いスピードで練習をして、遅いスピードで本番を弾くことは誰もが避けたいし、みっともないと考えがちなのですが。

・・・しかしよく考えてください。

CDやyoutubeに載っている、速いスピードの演奏は一昼夜でできた演奏ではなく、おそらく本人が何年もかけて練習した成果の結果の演奏のはずですし、そこまでたどり着くには何度も人前で演奏しているはずなのです。

スピードを上げることは必ず、テクニック、音楽、ともに余裕がなくなります。

テクニックは自分が未熟なテクニックであれば力が入ったり、音ミスが多くなります。

また、ゆっくり弾けば、自分の演奏を冷静に細かく聞くことができるのですが、速いとその余裕がないために雑な演奏になりがちです。

大事なことは少しスピードを上げたときに、どちらも問題が生じた時、その時点でスピードを上げずに何ヶ月、何年もかけて問題を解決することです。

非常に勇気がいる練習法ですが、これが最善の練習法なのです。

また、最初の本番演奏では、CDのようなインテンポの演奏は目指さないことです。

何年もかけて、何回も舞台演奏をして、いつかは速いテンポで、という意識を持つことです。


14.クラシック曲も立派な「即興演奏」なのです

クラシック音楽は、ジャズなどと違って、すでに楽譜があります。

奏者は楽譜通りに弾かなければならないという暗黙の決まりがあります。

それが故に、「クラシック音楽は誰が弾いても同じだからつまらない」

と言われる所以があります。

確かに、出す音階は全て皆同じです。

なので、誰が弾いても、曲は同じ。だったらみんな弾いても同じなのではないか?

•••しかし、これは残念ながら、間違いです。

ある程度、クラシック音楽を勉強すればわかるとは思いますが、同じ曲であっても違う奏者によって、微妙に違うことはよくあります。

しかし、それは偶然ではありません。

我々はあくまでも、作曲者の意向に沿って、作曲者の意図を汲み取り、そして演奏しなければならないということになっています。

そのために、音楽大学では、バッハやベートーベン、ショパンの研究をして、どう弾いたらいいのか?どう解釈したらいいのか?ということを勉強するわけです。

それ自体は間違ってはいません。

しかし•••そればかりに躍起になっていると、ともすると

「楽譜通りに、楽譜に忠実に弾くことが大事であって、それ以上に自分の勝手な解釈で弾いてはいけない」

という考えに陥りがちです。

もちろん、楽譜に書いてあることは忠実に守って弾かなければならないのは事実です。

しかし、それだけで感動的な演奏にたどり着けるのか?

答えは•••ノーです。

楽譜に書いてあることだけを守っているだけでは、いい演奏にたどり着けません。

楽譜に書いてあることは最低限の情報だけに過ぎません。

しかし、作者はもっと楽譜以上に、書きたい音楽性があったはずです。

逆に言えば、楽譜は単なる「紙」なので、作曲家はあの程度しか書き込みができないのです。

そこには恐ろしいほどの書ききれない、非常に幅のある膨大な情報量の音楽があるのです。

残る方法は•••

奏者であるあなたが、目の前の楽譜から音楽を”勝手に感じ取る”ことです。

そして、あなたなりの”感性”でその曲を勝手に解釈して、音楽を表現することなのです。

たとえ、作曲家が「花」をイメージしたとしても、あなたが「海」と解釈してしまうこともあるかもしれません。

しかし、それでもいのです。

それによって、あなたが良い音楽性を表現できた時、その楽譜は「生きた」音楽になるはずです。

私の大学時代のピアノの恩師であり、かつ作曲家でもあるJanos,Cegledyはこう言っていました。

「曲につける題名は作曲した後でつけることもある。だから私の曲は別のイメージ、および題名で勝手に解釈して演奏しても構わない。それがいい演奏ならば」

そう、あなたが演奏する曲は、あなた自身が感じ取って”即興”しなければならないのです。

そうやって”生きた”音楽にしなければならないのです。

おおよそ、自分の”勝手な”解釈が質の良い解釈ならば、多少の誤差はあっても、作曲者の解釈とほぼ一致することが多いのです。