「昔から腱鞘炎になって初めてピアニストは一人前と言われたものよ。あなたも腱鞘炎になるぐらい練習しないといけませんのよ」
これは某・現役音大教授の言葉であり、未だにこの教授は某音大ではかなり有名な人なのですが・・・。
ここでは、間違っているかどうかわかりませんが、あえて私の独自の意見を述べさせていただきます。
すなわち、腱鞘炎になったピアニストに明日はありません。残念ながらあらゆる意味でピアノ生命は絶たれます。
そうならないためにも、ここで述べることを真っ赤な嘘と思ってかまいませんから,頭の隅においていただければと思います。
通常ピアノの練習では,腕力や強引な指の力による間違った、無茶な練習をした場合のみ,腱鞘炎になる可能性があるのであり、長時間練習したから腱鞘炎になるわけではありません。
逆にいえば,重量奏法(重力奏法)をマスターすれば一日10時間練習しても何も起こりません。(10時間練習することが良いかどうかは別として)
私もまだテクニックが完成していなかった若い頃は強引な弾き方をしたために,筋肉を痛めることはありましたが,重量奏法(重力奏法)をマスターしている今日では,腱鞘炎はもちろんのこと,筋肉痛になったこともありません。
まず腱鞘炎についてですが、通常腱鞘炎ではないか?と思っている場合、そのほとんどはまだ筋肉痛である場合がほとんどです。
1.まず最初は練習中に腕の筋肉が疲れやすくなります。
2.それがやがて腕や指の筋肉が,練習後に鈍痛な痛みを発生するようになります。
3.さらにそのまま毎日練習を続けると、次第に練習後にのみ発生する痛みが練習中に,今度は鋭い痛みに変わってきます。
ここまではまだ筋肉痛(医学的にはオーバーユースと言うそうです)なのですが,これを越えると次にいよいよ腱鞘炎に移ります。
4.腱鞘炎になるともはや、ピアノを弾くことは不可能で、筋が炎のように痛みを伴うらしいです。
まず言えることは鈍痛な痛みの段階で整形外科,もしくは接骨院に行くことです。
単なる鈍痛な痛みなら1週間で治りますが,それ以上の症状になると,治療期間が長くなり,腱鞘炎になれば1〜2年間、ピアノを中断して治療に専念しなければならないと聞きます。
ただし,問題は痛みが発生したから,病院に行くというのは根本的な解決にはなりません。
せっかく筋肉痛を治しても,強引な弾き方を直さなければ,また筋肉痛になるからです。
腱鞘炎になった場合、ピアノ生命が絶たれるというのは,治療期間が長く,またその間全くピアノが弾けないというのも理由の一つですが,腱鞘炎になる人はそもそも弾き方自体が間違っていることが多く,仮に完治してもまた再発することが避けられないということなのです。
腱鞘、筋肉の治療に専念するだけではなく,奏法の全面改造をしなければ、腱鞘炎から一生逃れられないのです。
話を元に戻しますが、まず筋肉痛になる前段階,つまり練習している時に腕や指の筋肉が疲れることがあったら、もう既に奏法が間違っていると思って下さい。
その奏法はいずれ腱鞘炎に通ずる道です。いつ,奏法に間違いがあるかに早く気がつけば,それだけ,故障も軽傷で済みます。
なお、初期の鈍痛の時点ならばストレッチ程度で治ることもあります。
腱鞘炎にならないためには?
単純には、腱も筋肉も極端に最小限しか使わない効率の良い奏法に変えればいいということになります。
効率のいい弾き方なら疲れる事がないわけです。
また、女性の場合は男性と比べて筋力が少ないので,より腱鞘炎になりやすいとも言えると思います。
まずはピアノを弾いて,筋肉が疲れない様な奏法を考えることです。
まず自分の手を見て難しい箇所で手や腕がが硬直していないか観察して下さい。
硬直することは一番まずいのです。それを続けるとかならず筋肉痛になります。
それから,ピアノを楽に弾けるか,観察して下さい。
どんなに難しい箇所でも楽に弾ける奏法はあるはずです。それを探すこと。
たいがい生徒達は難しい箇所を腕力,指の強引な力でねじ伏せて弾き通す事をします。
しかしそれは残念ながら楽に弾いてはいません。おまけに音も潰れた汚い音になっているはずです。
言ってみれば,ウォーミングアップなしで朝一にすぐピアノの前に座って,難しい箇所がノーミスで楽に弾ける様になる様な、楽な奏法を目指すこと。
私は腱鞘炎を避ける唯一の奏法は重量奏法(重力奏法)しかあり得ないと思ってはいますが、他にも方法はあるかもしれません。奏法の押し売りはするつもりはありませんので・・・。
どちらにしても、腱鞘炎になってようやく一人前のピアニストではなく、ピアノ生命が絶たれると思って練習をして下さい。