多彩な音色の作り方・ピアノを歌わせるカンタービレ奏法講座

  1. ピアノの音色とは、科学的には硬い音と柔らかい音、この2音色のみでしかありません。
  2. 多彩な音色の正体は音量の無段階の段差の組み合わせによって生まれる。
  3. ピアノという楽器は単純で、鍵盤のハンマーのスピード(音量の変化)しか変化できません。
  4. 指は立てるのと寝かすのとどう違うのか(指を寝かせて弾いたら違った音色が発生するわけではない。)
  5. 手を卵型にすること自体が別に悪いわけではない。
  6. 大事なのは”倍音”ではなくて「伴奏音」。倍音は重要要素ではない。

まずはこちらの動画をご覧下さい。


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1.ピアノの音色とは、科学的には硬い音と柔らかい音、この2音色のみでしかありません。

カンタービレな演奏の様々な要素の中で最も最初に論じなければならない内容に、この「音色」があります。

音色とはなんでしょうか?

あたかもピアノは幾つもの音色を奏でるかのような記述は多々あります。

そしてその数多の音色を出すための様々なタッチがあるとも言われています。

事実、ピアノの音色は奏者によって多彩な音色を生み出します。

しかし、それらは私に言わせれば実は非科学的でしかありません。

すなわち

現実的にはピアノの楽器に音色はたったの2種類しかありません。

硬い音と柔らかい音。

これのみです。

そんなはずがないと思う人は大勢いると思います。

しかし、まずは奏者は科学的な頭を持つことが先決です。

ここではなぜか既に「多彩な音色」と書いてしまっていますが、これは実は聴衆から見た感覚です。すなわち、非科学的な発想でしかありません。

聴衆はどう感想を言っても良いと思います。「多彩な音色のを持つ奏者だった」とか「彼は100種類もの音色を持っている」とかいうことは構わないと思います。

事実、聞いている方は確かにそういう感触を持ちます。私ももちろん、そういう表現を使うと思います。

しかし、奏者ならば、そういう考えは持ってはいけません。

常に奏者はピアノを科学的、幾何学的に捉えなければ多彩な音色を持つ演奏に近づくことはできないのです。

そんな馬鹿な•••と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、立場が聴衆と奏者とは完全に違います。

ここからは聴衆のための論文ではなく、あくまでも奏者のための論文と考えて欲しいのです。


2.多彩な音色の正体は音量の無段階の段差の組み合わせによって生まれる。

何度も言いますがピアノの音色とは

  1. 硬い音と柔らかい音(それはさらに硬い〜柔らかい段階は100段階になります)
  2. 大きい音と小さい音(それはさらに大きい音〜小さい音の段階は100通りあります)

実はこの4つの天文学的組み合わせによって生まれます。

音が硬いか?柔らかいか?

この区別は(素人的な意見を述べれば)高周波がどれだけ含んでいるかに関わってきます。

高周波が多く含めば人はその音を(硬い)と認識し、高周波が少なくなれば(柔らかい)と認識します。

さらに低周波も影響はありますが、まずは多分高周波の違いだと思います。

それによって、あたかも多彩な音色を聴衆に錯覚させているだけにすぎません。

ただし単音のみでは音色は認識できません。

上記で述べたようにその音たちの組み合わせにより人間が、「錯覚」を起こすのです。

わかっている人はわかっていると思うのですが•••。


3.ピアノという楽器は単純で、鍵盤のハンマーのスピード(音量の変化)しか変化できません。

巷ではあたかもピアノのハンマーの叩くスピードを変えれば、シャンク(ハンマーの棒)がしなって当たる面が変り、全く違う音色を発生させるとかいう論文がありますが、全くのデタラメです。

また、最初の弦にあたる”カツッ”というアタック音がいくつもの音色の正体の一つという人もいますが、それも全くのデタラメです。

メーカーはそのような「アタック音」のために億単位の開発費を当てません。

メーカーはそんなことを考えてはいないし、いちいちシャンクが派手にしなっていたら、しっかりしたフォルテ音が出なくなります。

また、仮にシャンクがしなったとして、フェルトの別の面が当たったとしてもおそらく柔らかい音しか出てこないのは明白です。

メーカーが莫大な開発に投じている内容はあくまでも

  1. 発する音の美しさ。
  2. 小さい音から莫大な大音量の差を可能にする楽器本体。
  3. 莫大な音量の調節を容易にする扱いやすいアクション。

のこ3点の開発を中心にやっているだけです。

単純に奏者はあくまでもピアノのハンマーをゆっくり弦に叩くか、それともスピードを持って叩くかの違いでしかできません。

すなわち、弦楽器と違ってピアノ奏者はピアノに接した時に、この2つの奏法しかできないのです。

あたかも鍵盤を特殊な押し方をしたからといって、特殊なハンマーの動かし方をして音色が変わるわけではないのです。

もちろん、ゆっくりから速くハンマー(鍵盤)を叩く間には無限大の段階があります。

奏者はこの無限大のスピードの調節により、あたかも音色を変えたのごとく、聴衆に錯覚をさせて演奏するのです。

あくまでも奏者は科学的な頭脳を持ってピアノ奏法を研究しなければ、永遠に多彩な「錯覚的音色」を出すことはできません。


4.指は立てるのと寝かすのとどう違うのか(指を寝かせて弾いたら違った音色が発生するわけではない。)

世間ではあたかも、ピアノタッチにおいて

指を寝かせれば・・・”あら不思議”・・・たちどころに違った音色をピアノが奏でる・・・

そういう理屈が通っているのですが・・・

ではなぜ指を寝かせたら、「違う音色」になるのかを考えて欲しいのです。

現代は21世紀です。非科学的な発想では多彩な音色を生み出すことはできません。

上のページで述べていますが、ピアノの鍵盤はスピードしか調節できません。

指を寝かせても立てても、結局は、ハンマーのスピードを変えることしかできません。

上の動画でも説明している通りです。

問題は、指を立てる、寝かす・・・これで鍵盤を押すスピードが変わることなのです。

指は立てた方が物理的に小さいエネルギーで大きいパワーを生み出します。

一方指を寝かすと指の面積が広いのでエネルギーが散在してパワーが出ません。

それを逆手に利用しているだけなのです。

逆に言えば、立てる、寝かす・・・そうやっても、そもそもピアノが音が出ないピアノですと、立てても音は出ませんし、出過ぎるピアノだと寝かしても音が出てしまいます。

その場の環境に応じて寝かす、立てる・・・。

もしくはそれだけではなく、腕の重さも調節して、さらにソフトペダルも使って音量の調節を行う。

そうすることによって初めて音色の変化を生み出せるのです。

単純にボタンのように、寝かす、立てる・・・それだけで音色が簡単にスイッチのように切り替わるわけではないのです。


5.手を卵型にすること自体が別に悪いわけではない。

なぜか?この業界では手を卵型にすることを”弊害”と考えて説明している動画や文章があるのですが、それは正しくないと思います。

さらに、どんな状況でも子供のうちから指を寝かせて弾くことを推奨している人もいるようですが、その意見にも私は同意できません。

結局は特に大人は、その場その場で使い分ければ良いだけのことだと思うのです。

特に小学低学年の子供の場合は長年の経験上、絶対的に手の形は「卵」で教えるべきだと思っています。

卵の場合、何が違うのかというと、単純に指が立つだけの話です。

指を立てると音が荒い音になって、よくない。だから卵型は”弊害”である。

なんでそうなるんですかね?

何度も言っていますが現代は21世紀です。もっと科学的な頭脳を持って欲しいのです。

指はその場その場で指を立てた方が良いことは数多くあります。

メロディーを弾くとは絶対的に指は立てないとはっきりした音が出ません。

それで音が出すぎたら、弱める・・・それでも対応できなかったら、いよいよ指を寝かす。

それだけのことです。

特に子供の指導においては絶対的に始めは”卵型”で指を立てて指導すべきです。

何故ならば子供は指がまだ弱いのです。

ただでさえ、弱くて大きい音が出ません。

そういう場合には、か弱き指から最大限のパワーを出さねばなりません。

これはもう、指を立てて弾くしか方法がないのです。

また、もう一つの私が指を寝かす指導をしない理由・・・。

これは大人でもそうですが、ピアノを弾く手、指には最低限鍛えなければならない筋力があります。

実際は主に腕の筋肉なのですが、指をしっかりさせる、指先が凹まないようにしっかりさせる筋力を鍛える必要性があります。

また手の形を一定のドーム型にする筋力も必要です。

それを初期の段階で鍛えなければならないのですが、寝かせてばかりだと、結局は寝かせる時の筋力がついても指を立てる筋力が育たなくなってしまう。

また子供の頃から寝かす指導ばかりしていると、その癖が付いてしまって、高学年になった時に指を立てる弾き方ができなくなってしまうのです。

これには苦い経験が過去に1〜2人いました。

それ以降はどんな時でも高学年でオクターブが届いて、ソナタ集に入る頃までは指を寝かす指導はしません。

もちろん重量奏法は教えますが、ロマン派独特の弾き方の指導は私はしません。

もっとも、音色にこだわらせるために、部分的に寝かす指導をするのならわかるのですが・・・。


6.大事なのは”倍音”ではなくて「伴奏音」。倍音は重要要素ではない

倍音、基音・・・最近になってよく聞く言葉です。

私も昔は一体何の意味なのかわからなかったのですが・・・。

そう思っている人は多いと思います。

この2つの意味をよく知らないとピアノが上手く弾けないんじゃないかと。

実際は・・・そんな言葉知らなくて十分です。

何の意味もなさないですし、余計に惑わされるだけです。

簡単に説明しますと、倍音はあくまでもペダルを使った時のピアノの中で鳴り響いている共鳴音です。

一方、基音とはその共鳴音を発生させた元の音です。

実際重要なのは、倍音ではなくて、伴奏音です。

伴奏音には基音と倍音が両方含まれます。

倍音のみでは演奏は成り立ちません。

輪郭がはっきりしない、ぼやけた演奏になってしまいます。

大事な点は、いかにして伴奏音を小さく、かつ音楽的に演奏できるか?

これが本当に大事な点です。

倍音のみで音楽は演奏できません。

ただ、伴奏音をまるで、倍音がかすかに鳴り響いているかのごとく、小さく弾くことを目標にする、と言う言い方ならばわかります。

加えて、メロディーにおいては倍音は関係ないですし、考えてはなりません。

あくまでもメロディーは基音がはっきり聞こえないと、まさに輪郭がぼやけた演奏になってしまいます。

ホールでよくぼやけた演奏を聴くことがありますが、あれはまさに、基音(メロディー)がはっきりしていない、(もしくは伴奏音とメロディー音が同じ音量のためということもある)ためです。

もちろんメロディーの音量はどれぐらいにしたら良いのか?という問題点はあります。

確かに市場では音量が大きすぎるパターンは多いように思えます。

しかしそれとは全く別な話であり、メロディーを倍音のごとく弱く弾くことは勘違いを引きこす元だと私は思っています。