2024年現在において、電子ピアノがどの程度進化しているかを探るために楽器店に出向いてみました。
それぞれのメーカーの品目はチェックしてはいませんが、おおよそどのメーカーも中〜ハイレベルの30〜70万円台の比較的高い値段の電子ピアノを弾いてみました。
メーカーは業界でも有名御三家?ヤマハ、ローランド、カシオ、あとはカワイも触ってみました。
その感想です。
1.最近の電子ピアノは確かによくできている
確かに最新の電子ピアノはよくできています。
タッチ感は本当に本物そっくりですし、音の質もかなり本物に近いものがあります。
タッチ感に関しては本当に音量の調整においてはかなり微調整が可能でわずかなタッチによる音量の調整はかなりできます。
またそれによる音色の調節もある程度はできるので硬い〜柔らかい音作りは一昔前に比べたらかなり精度が高いと思います。
正直、ピアノの練習においてまずは譜読みをしようと思えば現代の電子ピアノは全くもって不足はないと思います。
またブルグミューラー程度までのレベルならば、このレベルの電子ピアノで十分学習はできるのではないかと思います。
正直、音量の調節においては多分アップライトピアノよりも敏感な調節が可能かもしれません。
とにかく感心したというのが本音です。ですが・・・
では私は生徒に最新の電子ピアノを薦めるかと言えば・・・
残念ながら、曲の中で積極的に表現を始めた生徒には勧めません。
そこには
よくできてはいるが足りない決定的なものがある
と私は判断してしまうのです。
もっともそれはあくまでも私個人の判断です。
例えばストリートピアノとして、もしくは派手な音量のみのロック調な曲であれば電子ピアノでも十分かもしれません。
私が足りないと思うのは・・・音色の変化、という点です。
2.音色という分野について
ピアノの表現の中で重要なポイント・・・音色。
音色とはなんでしょうか?
それは正直、現代においては実はまだ漠然としたことしかわかっていません。
業界ではいろんなことが言われていて
「脱力するといい音色が生まれる」
とか、
「弾いた後で空気をかき混ぜたり、手を裏返したり、手の下の空気をかき混ぜると変わる」
とか
「人の身体からは波動が出ていて、それが音色を変えるから身体から出る波動を調節する」
とか言う理解不能な奏法一派がいますが(笑)。
メーカーの方では音色のことは多分わかっていて、ダイナミクスの差が音色に影響することはわかっているようです。
そしてそのダイナミクスの差で発生する倍音の種類により、音色が発生することはわかっているようです。
でも多分そこから先はおそらくメーカーもよくわからないんだと思います。
なんと言っても音色は測定できないので。
ただ、音色の違いを表すには、さまざまなダイナミクスの差とペダルを使うことによる倍音の操作によって生まれるわけですが・・・
3.電子ピアノは多彩な音色が発生しない。
電子ピアノはこの音色の違いを出すことができません(汗)。
これ以外はそこそこなんでもできる楽器なのですが(汗)
これに関しては全メーカーの最新機種を触ってみて、やはりどれもできませんでした。
音色の変化をしようとしても、何も変化しないのです。
もちろん美しい音は出ます。しかし単色の美しい音しかでません。
多分コンピューターのデータの中には一音のみの倍音の変化しか入っておらず、多彩な倍音のデータ(サンプリング)が入っていないんだろうと思います。
短音においての音色の変化はできても和音を左手で弾いて右手で主旋律・・・
もうこれで倍音の違いによる音色の変化ができるデータが基盤に入っていないんです。
技術的にはやろうと思えばできるのかもしれませんが・・・。
なので現代の電子ピアノはどこまでも高級志向が発達しても、多彩な音色の変化はできない。
これが現状です。
これだけ科学が進歩していてもここまでは商品化されていません。
ただ・・・
4.アップライトピアノとの比較
残念ながらアップライトピアノもほぼ国産ピアノにおいても音色の変化はほとんどできません。
おそらくメーカーにおいてはコスト削減のために「そこまでユーザーは求めていないだろう」
と思っているのかもしれません。
なので国産アップライトピアノと電子ピアノにおいてはどちらもあまりレベルの差はないと思います。
もちろん本物の音なのでやはりアップライトピアノの方がそれらしい美しい音は出ますが・・・。
5.将来の展望も含めて最終結論
これはあくまでも、私のような一定レベル以上の人達、もしくは音色の変化を求めている人にとってはなのですが・・・
現時点では電子ピアノはグランドピアノに追いついていません。
ですが電子ピアノの利点も多いです。
調律が不要だったり、録音ができたり、アクションも簡素にしているので故障が少ないでしょう。
他、MIDIデータのやり取りができるのも特徴です。
あらゆる面である一面(音色)を我慢さえすれば他の分野ではかなり進化しています。
ですが・・・こと表現ともなるとやはり、いまだにグランドピアノに肩を並べてはいません。
しかしこれももしかすると時間とコストの問題かもしれません。
近い将来、フルコンサートピアノに匹敵するような表現力を備えた電子ピアノが出るかもしれません。
技術的にはおそらくそれはコストを考えなければ可能ではないかと。