私の生徒が中古のグランドピアノが欲しいという事で、御用達のピアノ工房にお願いした所、「あ、いまなら格安でG3を再生してお売りしますよ」と言われたので原物を見に行く事にした。
年代は1970年のG3であるが、減っていないハンマーはそのままで、弦を新品のレスロー製に交換してアクションのクロス交換、響鳴板のニス塗り替え、フレーム塗り替え、ダンパー交換をして、格安で提供となった。
初め工房に置いてある未修理のG3を見た時は「うわっ、ひでえ」という言葉が出るくらい、錆だらけで、汚れまくっているし、きったない状態であった。
同行した生徒は既に目が点=「:_:」になっている状態で・・・。
そう、一般の人がこれを見たらこんなの修理したって、どうせ価値がない廃品まがいにしかならないだろ?と思うであろう。
40年近いぼろぼろのピアノではスクラップ、ジャンク品扱いでしかないだろう。
そう、一般の何も知らない素人からみればだが・・・。
しかし、昔のG3を知っているものから言わせれば、これは宝なのである。
横で生徒が「ちょっと私だまされてるんじゃないですか?」という様な視線を送っているのを横目に、私はこのぼろぼろになっているG3を早速試弾してみる事にしてみた。
既に38年も立っている”スクラップ”状態であるはずのG3からは・・・しかし現代のピアノではあり得ない様な音が出ていた。
既に弦は寿命が来ているにも関わらず、そのG3は渋い、良い音を出しているのである。
これには驚いた。
しかもそれがヤマハ特有のキンキンした音ではなく、どちらかというとベーゼンドルファーのような”木”の音がするのである。
これはたぶんピアノのケース(外枠)が良く鳴っているのだろうか?
もちろん、ベーゼンやスタインウェイ程の完成度ではないにしろ、現代のヤマハと違って、この時代のヤマハピアノは明らかに、し好が違う音作りをしているし、良い品物を作っていた事は容易に判断できる。
さて、カナーリ不安な生徒を横目に「じゃあ、再生をお願いします」といって仕上がりを待つ事にした。
約1ヶ月後に「できました」と電話が入り見に行ってみると・・・
ピカピカになったG3が置いてあった。
購入するはずの生徒をどけて、私がわれ先にピアノの椅子に指おろしで?座って弾いてみる。
・・・とこれが驚くほどの再生ぶりだったのだ!
レスロー製の弦との相性がいいためか?明らかに1ヶ月前に弾いた時の音よりかなり良くなっている。
アクションの感触も申し分ない。
完璧に”新品”として蘇ったG3であった。
なんでも、再生する前の段階で分解した時に弦圧が多少強すぎていたらしいので、幾分弱めたらしい。さらに響鳴板に塗るニスの種類を特殊なものにしたらしいのだが、それが良かったのか?分かりませんが信じられない様な音が出てくる。
言葉でいうと、いぶし銀の明るい音ではあるが固い音ではない。丁度いい固さの音といったらいいだろうか?
アクションの感触も素晴らしい。もちろん完璧な整備をしたという事もあるのだろうが、とにかくこの時代のヤマハピアノは音も、アクションの感触も、素晴らしい!
今では良く車で
の様な40年前のクラシックカーが再生されて良く走っているが、こんなのはどこまでレストアしたって、故障があちこち出てきて、やはりスクラップ車でしかないが(失礼!)
ノスタルジーに浸るのは悪くはないが、いっちゃ何ですが私が今乗っているプリメーラ2.0ツインカムの方がよっぽど速いです。
しかしピアノは違うのである。
ちなみにこういうピアノはさらにハンマーなどを別のメーカーに替えて、さらに響鳴板も多少改造を加えればかなりオリジナルとは違ったピアノになることは別のメッセージ集で述べたが。
G3オーナーの方はぜひ、チャンスがあれば再生及び改造をすすめる。
それだけの可能性を持っている”スクラップ”ピアノだから!