あの、噂のシゲルピアノ、インプレッション

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最近非常に人気の高い、あの、噂のKピアノ最高機種。

ピアノマニアならよく知っていると思うが、市場では非常に評価は高いようだ。

それはなんとなくわかるような気がする。

今まで市場はヤマハ一辺倒で占められてきたからだろう。

ヤマハにはない、何か別の味付けが欲しくなったのだろうし、ヤマハ特有の金属音に嫌気がさした人も多いということなんだろうと思う。

それはそれでわからなくもない。

今や市場ではこのピアノに対してのファンが多いと聞く。

Kも本気度で出してきたピアノということだろう。

このピアノを絶賛するサイトも多いので私の方からは•••逆に批判を交えた意見を書きたいと思う。中にはそういう意見があってもいいだろう。

ただまあ•••市場には非常にこのピアノのファンが多いと聞く。

そういう人たちに水を差す気はないので、ここではあえて名前は出さないようにしておく。

噂のピアノの顕著な長所は音にある。

ヤマハだと、音が金属的な音がする。

かといってスタインウェイやベーゼンドルファーは高すぎて手が出ない。

そこでこのピアノを選択する、ということだと思う。

確かにこのピアノの音はとてもいい。

シャープ過ぎず、丸くて太くて、澄んでいて理想のピアニッシモが作りやすいことは事実。

ショパンの曲の中ではこういう音はとても必要になるし、かなり説得力のある武器になる。

ヤマハでこういう音を作るのは至難の技だ。

ちょっとテクがいる。多分普通の人だと出せないに違いない。

だから、そういう点で誰でも比較的楽にいい音を出してくれるこのピアノは、画期的なピアノであることは間違いない。

加えて、外国産のピアノよりはるかに安い。

もうこのピアノを選ぶことに何の躊躇があろうか、ということなんだろう。

このピアノを勧める人は非常に多い。

では•••私はこのピアノを勧めるか?

答えは•••まあ、あえて否定的なことを言うつもりはない。

ただ私はこのピアノを買うかと言われたら•••絶対買わない。

月5000円でフルコンをリースすると言われても•••絶対借りない。

だからと言って「買わない方がいい」と言うつもりはない。

ピアノなんていうのは、その人が気にいったんだったら、買えばいいだけのこと。

自分とそのピアノとの相性が良ければなんでもいいと思っている。

だから、私の意見は一個人の意見として捉えて欲しい。

ただ•••あくまでもそこそこのピアノ弾きの人間が発言する内容と思ってもらえればと思う。

噂のピアノの長所は短所にも、なり得る。

実は、私はこのピアノ、今までものすごい台数を弾いてきた。

そのほとんどは6、7、フルコンサイズである。

つい先日も、とある知り合いのお宅に7サイズの噂のピアノが置かれて、隣にはヤマハC3があるという、とんでもなくヤマハとKの比較ができるまたとないチャンスに恵まれた。

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この時にこのピアノを今まで弾いてきて、「うーん」と思ってきたことが明確になった気がする。

まず、この噂のピアノは音が柔らかいのが特徴だが、それが仇となって、とにかく音量が出ない。

たまたまそのピアノが•••ではなく、とにかく、弾いてきたピアノ全てが、音が出ない。

ヤマハ並みに出るピアノをこの、噂のピアノで見たことがない。

もちろん、ノクターンのような曲ならばそれでいいと思いがちだが•••それは違うと思っている。

ピアノはダイナミクスがあってなんぼの楽器だ。

それによって無限の表現ができる。

しかし•••そこを挫かれると、私としては苦しいものがある。

実は驚いたことに、隣のC3の方がはるかに音量が出る状態だった。

特に低音の爆発的な音量はなぜかC3の方がはるかに勝っていた。

もちろん、音質は比べようもないのだが•••。

この、噂のピアノがなぜ、音量が出ないのかはわからない。

しかし、昔からKは音量が出ない機種が非常に多い。

そして•••これが困ってしまうのだが•••硬い音が出ない。

醜い硬い音を生まないように•••と考えられたピアノなのだろうけれども、それが逆に仇となって私はとても困ってしまうのだ。

なぜなら、曲の中には必ず、硬い音と柔らかい音が交互に出てきて、曲の表現が成り立っているからだ。

非常に私の苦手なアクションタッチ。

私は重量奏法である。重量奏法はとにかく、タッチは軽く、重さの調節のみで演奏をする。

この奏法にぴったりなピアノはスタインウェイにヤマハ。

そもそもスタインウェイはニューヨークで重量奏法であったラフマニノフの多大なる協力によって改良が施されたと聞いている。

だから、特にニューヨークスタインウェイはとても軽い。

しかし、この噂のピアノはどちらかというと昔のドイツ式ピアノというか、なんというか•••指を積極的に動かして弾くためのアクション設定になっている。

確かに、指を動かせば動かせば動かすほど、表現がしやすいピアノではある。

単純に鍵盤の往復の動きが大きくて、懐の深さがある。

そこでピアニストは鍵盤の大きい振幅の動きで表現をするのだろうけれども、これは実は重量奏法の人にとっては、たまったものではない。

重量奏法は表面のみのわずかな鍵盤の浮き沈みで全てを表現するので、正直、このピアノに当たってしまうと、焦ってしまう。

つまり、•••弾けなくなってしまう。

私にとっては隣のC3はカチっとすぐ反応してくれるのだが、この噂のピアノはかなり鍵盤を押し込まないと反応しない。

なんというか•••ぬかるみに指を突っ込んでいる感触で、どこが底なのかわからない。

加えて、やや鍵盤の動きはヤマハ、スタインウェイに比べると粘っこい。

アクションの材質は革新的なものと聞いているが、私には正直、そんなことはどうでもよくて、とにかく弾きやすければ鉄でもジュラルミンでも純金でもいいのだが•••。

もちろん、美しい音を生み出すにはこのピアノはもってこいのピアノであることは間違いない。

しかし、ピアノ弾きはどうやって美しい音を生み出すのかを研究することも必要だと思っている。

そこにはタッチの違いとダイナミクスの変化が重要なのだけれども、これはそれの過程を省いてしまう。

つまり、誰でも美しい音を、いとも簡単に出せてしまうのだ。

それはそれですごくいいピアノだとは思うが•••。

しかし、どんな音色も出せるオールマイティなピアノかというとそれは疑問。

市場で他の人たちがこのピアノをどう判断するのかはわからない。しかし•••

ある程度のピアノ弾きがこのピアノを選択するかは•••わからない。

事実、今年のショパコンのピアノ選定ではヤマハは圧倒的な人気でスタインウェイを超えた利用人数らしいのだが、この噂のピアノをあえて選んだ人はあまり多くない。

この辺りに、幾つかのkeyが隠されていると私は思っている。

しかし、一方で浜松コンクールではこのピアノを選んだピアニストは多いという情報もある。

しかし、ここには罠がある。

国際コンクール用に用意されたピアノというのは実は市販のピアノとは全く違う。

完全に別物と思っていいのです。

事実、このメーカーの本社ショールームのコンクール用のピアノを触ってみるといい。

全くの別物でどう考えてもヤマハのようなピアノである。

もちろん、それはヤマハも同じではないかとは思うのですが・・・。

ヤマハのコンクール用のピアノは触ったことがないのでわかりませんが、このメーカーKに関しては全く市販とは違う仕様のピアノということは事実です。

あのピアノだったら私は買ってもいいと思っている。

それぐらいコンクール用のKピアノは素晴らしかった。

ただし、私の意見は、あくまでも一個人の意見。

買う人があとは考えればいいので、あまり参考にしないでいただきたい(汗)

2015.10.11