スタインウェイの右に出るピアノはないと言われていますが、一方で、とかくヤマハのピアノは音楽業界では、レベルが低く見られがちなのですが私にはそれがよく理解出来ません。
たしかにフルコンピアノの場合、スタインウェイには出て、ヤマハでは出ない音はあります。
特に、私が思うにスタインウェイの場合、弱音ペダルを使うとまったく別物のピアノかと思わせるほどの違った音が出てきますが、ヤマハは残念ながらスタインウェイほど多彩な弱音ペダルの効果は期待出来ません。曲の中で神秘的な音が必要な場合、そのすべてがヤマハは出るとは限らないのです。
しかし、そういう部分は曲の中では2割も満たない事がほとんどです。つまり、あとの8割はヤマハで十分ということになります。
そしてもう一つ、スタインウェイとヤマハの違い、それは、アクションの違いです。
スタインウェイのアクションはたしかに素晴らしいものがあります。こちらの意志を素直に伝えるアクション。故にとても弾きやすいものです。フェザータッチとはこの事かな?とも思えます。
スタインウェイにくらべると、ヤマハのアクションは少々、ねばりっこい感じがあります。
しかし、それでも間違いなくヤマハのアクションはスタインウェイの次に素晴らしいものです。
ここでひとつ、スタインウェイとヤマハ以外のメーカーについて述べます。
ピアノのメーカーには、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、プレイエル、ザウアー、ブリュ−トナ−、ホフマン(このすべてのピアノを私は弾いた事があります)など、いろいろなメーカーがあります。
どのメーカーも、個性的な面では非常に気に入ってはいますが、ホールでどんな曲でも弾きこなさなければならない事を考えると、どれも完璧な性能ではないと思います。ホールで弾くという点においては間違いなく、スタインウェイの次には、ヤマハではないかと、私は思っています。
そして私が強くヤマハを推す理由。それは普及品レベルのピアノの価格です。
前にも述べた、スタインウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、プレイエル、ザウアー、ブリュ−トナ−、等の外国製のピアノの値段はおよそ、ヤマハの3〜4倍。
はたして一般庶民がピアノごときに800万円ものお金を出せるでしょうか?私は一生かかっても出せません。
しかしヤマハは、200万も出さなくても、一級品に近いピアノを手に入れさせてくれるのです。(ただし、ここではっきりしているのは、ヤマハは一級品ではないという事です・・・といってもプレイエルやブリュ−トナーは一級品とはいいがたいのですが)
そしてもう一つ、ヤマハを推す理由。それはヤマハ独自のオートメーション化による製品の均一性です。
スタインウェイ等の外国製のピアノはそのほとんどが、手作りによるものです。ですから、たしかにピアノ一台一台が微妙に違うものが多く、年数が経てば、更にその違いが明確になってきます。当然のごとく、新品でも「当たり外れ」があります。特にブリュ−トナーやペトロフなどの共産圏で作られたピアノはかなりはずれが多いと聞きます。
その点、ヤマハの普及品ピアノ(Cシリーズ)は絶対に、はずれはありません。機械で作っているだけでなく、検査も相当厳しいようで、私は今まで、はずれのヤマハを見た事がありません。これは本当に素晴らしい事で、誰が買っても安心して同じ高品質のヤマハが手に入るわけです。もっとも、そのおかげでどれもこれも同じ音が出るので「非個性的」とも言われますが、はずれをつかまされるよりはましでしょう。
ところで、ピアノを完璧な状態に整備する事はとてもお金がかかる事を御存じですか?
たとえヤマハでも最高の状態を保つために除湿器を入れ、調律、整音(音を整える)、整調(アクションの整備)をくり返せば、1年に6〜7万円以上かかります。電子ピアノと違ってピアノは維持費がとてもかかるのです。
しかしそうやって、最高の状態にしてあるヤマハのピアノはとても素晴らしい音がするものです。
本来は、新品の時の音の美しさはきちんと整備と修理をくり返せば何十年でも保つ事ができるのですが、私が時々見かけるヤマハピアノ所有者のピアノは実際は整備を怠ったが為に驚くほど、ひどい状態のピアノが多いのです。
「ヤマハのピアノは音が金属的で薄っぺらい音で嫌い」・・・良く聞く意見ですが、そのほとんどが整備がまったくされていないピアノなのです。
もっともスタインウェイも、私が遭遇したそのほとんどが、やはりあまり良くない状態がほとんどでした。整備が行き届いていないスタインウェイよりも、完璧な状態のヤマハの方が良いピアノである事は間違いありません。
もしも、よい状態のスタインウェイやヤマハのピアノの音を聞きたければ、それぞれのショウルームへ行けば間違いなく遭遇出来ます。ヤマハにおいては銀座ヤマハ本店が良いでしょう。
今、ヤマハは残念ながらどんどん値上げを行っていて、一般庶民に対してピアノが「高嶺の花」になりつつある状態なのですが、それでも外国のピアノに比べたら、どう考えてもスタインウェイの次のレベルと言えるピアノが驚くほどの安値で売られている事を皆さんがもっと気がついて欲しいと思います。
実際、ヤマハのC3であれば、まず音大受験には申し分ないレベルのはずですから。